らくだ工務店 第20回公演 『戦争にはいきたくない 〜あるネジ工場の景色〜』

作・演出:石曽根有也


2007年に上演し、劇評など多くの好評を得ると共に
現在のらくだ工務店のカラーを決定づけた作品に新たに手を加え、
豪華キャストを招いて2011年5月、再演決定!


出演:林和義 古川悦史 河相我聞 今村裕次郎 高瀬哲朗 
    小橋めぐみ 駒木根隆介 / 山路和弘


2011年5月20日(金)〜29日(日) 下北沢駅前劇場

第13回公演の再演。私が観始めたのが第14回公演の「だるまさん、ころんだ」からなので、その1つ前の作品ということになる。「現在のらくだ工務店のカラーを決定づけた作品」というとおり、実にらくだ工務店らしい芝居だった。
では、らくだ工務店らしい芝居とは何か。ある日常的な集合体(ねじ工場の工員たちだったり、消防団の団員たちだったり、銭湯に集う人たちだったり、動物園で働く人たちだったり)の中でのリアルな日常を描きつつも、各人がそれぞれの事情を抱えていて、その事情がリアルな日常の中にちらほらと見え隠れするような芝居だ。
ただ、その構造ももはやどうなのかなって今回の芝居を観て思った。それぞれの事情をチラッとだけ見せて、あとは観客に想像させるということなのだが、2時間弱の芝居でそういうことをしても消化不良になるケースがある。その最たるケースが「カラスの歩く速さ」だった。観ていても、表に出てこない裏の事情がどういうことだったのかうまく想像できなかった。
逆にあまり裏の事情を想像させず、また、あまり重い事情を抱えている人も出てこない「だるまさん、ころんだ」が私にとっては一番面白かった。
表だけ見せていたのでは底が浅いという考えもあるかもしれないが、表だけを見せて淡々と話を進めていくところにおかしみや哀しみをまぶすことも十分に可能だと思う。その成功例が「だるまさん、ころんだ」だと思う。
また、主役がいないというか全員が主役なんだというのもらくだ工務店の特徴だが、ある程度軸になる人(「だるまさん、ころんだ」の朝倉さんのような)が居たほうが話が展開しやすく、観ている方も感情を入れやすくなるような気がする。
瓜田さんが居なくなってしまったので、女優が弱いのも残念。林、古川、今村の3人が鉄板なだけに女優陣が強化されるのを望む。
なんだかんだ書いてきたけど、好きだから観続けている訳であって、林、古川、今村の絡みは何物にも代え難い面白さがある。あの絡みを生で観られることは至福のひとときと言っていい。
それにしても今回山路さんの出番が少なかったなあ。もっと観たかった。もったいない。