罪の轍(奥田英朗)★★★★☆ 12/26読了

昭和三十八年。北海道礼文島で暮らす漁師手伝いの青年、宇野寛治は、窃盗事件の捜査から逃れるために身ひとつで東京に向かう。東京に行きさえすれば、明るい未来が待っていると信じていたのだ。一方、警視庁捜査一課強行班係に所属する刑事・落合昌夫は、南千住で起きた強盗殺人事件の捜査中に、子供たちから「莫迦」と呼ばれていた北国訛りの青年の噂を聞きつける―。オリンピック開催に沸く世間に取り残された孤独な魂の彷徨を、緻密な心理描写と圧倒的なリアリティーで描く傑作ミステリ。

ある程度読み進めたところで、これは実際の有名な誘拐事件をモチーフにしていることに気が付いた。そうなってくると、その事件と同じように進むのか、変えてくるのかというのも1つの読みどころになる。ネタバレになるので、ここでは詳しく書かないが。
『オリンピックの身代金』もそうだったが、この頃の時代や風俗が実にリアルに再現されている。人物もよく書けているし、ストーリー展開も抜群。面白くて夢中になって読んだ。