昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられた!しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。「昭和」が最も熱を帯びていた時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、エンタテインメント巨編。
帯の「著者の新境地にして最高傑作、誕生」は大袈裟ではないね。読んで本当にそう思う。伊良部ものよりはもちろん『最悪』や『邪魔』に近いわけだが、そのスケールや書き込みの緻密さは比ではない。
爆弾を仕掛ける犯人側と警察側を交互に描き、さらに犯人側の時間を半月ほど遡ることによって、実際に起こった事柄の裏側がどうなっていたのかを半歩遅れで知ることが出来る。この構成が絶妙だったね（若干、冗長の嫌いもあったけど）。
あまり細かいことはネタバレになりかねないので書きたくない。とにかくこの本は万人にお薦めできる。図書館のリクエストの順番を待つより買ったほうがいいよ。
どの作家もそうだけど、力を込めて書いたと思われるものは面白いね（力を抜いてると思われるものも多いからね）。年の最後にこれだけ面白いエンターテイメント小説が読めて大満足でした。
| オリンピックの身代金 | |
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