大阪の下町に生まれ育ち、東京で小説家として生きる38歳の夏子には「自分の子どもに会いたい」という願いが芽生えつつあった。パートナーなしの出産の方法を探るうち、精子提供で生まれ、本当の父を捜す逢沢潤と出会い、心を寄せていく。いっぽう彼の恋人である善百合子は、出産は親たちの「身勝手な賭け」だと言い、子どもを願うことの残酷さを夏子に対して問いかける。この世界は、生まれてくるのに値するのだろうか―。
第1部は「乳と卵」の焼き直し。直前に読んでいたから、違いが分かって興味深かった。第2部はそこから8年後。夏子は小説家となり、相手はいないが、自分の子どもが欲しいと考えるようになっている。女性でいることがどういうことなのか、子どもを持つということがどういうことなのかが色々な視点で語られる。そもそも子どもを産もうとすること自体が親のエゴではないのかとか、子どもなんて産まない方がいいのだみたいな話になると、人類の存続に関わるし、じゃあ、そもそも人類なんて誕生しない方が良かったんじゃないかという話にもなる。私には娘がいるが、少なくとも彼女が生まれきて良かったと思える家庭や世界を作っていきたい。