泥棒は深夜に徘徊する(ローレンス・ブロック)★★★☆☆ 10/24読了

仕事の決行は週末、今夜は下見だけの予定。なのに、泥棒の職業病か、バーニイはどうしてもその夜のうちに別のひと仕事をしたくなってしまった。そこで偶然目についたアパートへ侵入したのだが、それが仇となろうとは。アパートの住人が突如戻ってきたために、ベッドの下に隠れて、とんでもない事態に直面。なんとか難を逃れたと思いきや、街のその一画で偶然別件の強盗殺人が発生しており、街角の防犯カメラに姿をとらえられていたために、今度は殺人の容疑者に。自ら真犯人を捕らえるしかなくなったバーニイ、またしても東奔西走する羽目に! 記念すべきシリーズ長篇第10作

ご存知泥棒探偵バーニイ・シリーズ。相変わらずの面白さだ。会話を中心としてとにかく色々な面で洒落てるんだよな。日本の小説にはなかなかこういうのがない。
話は逸れるが、これを読んでいる時にずいぶん久し振りにラフロイグを飲みたくなって飲んだ晩があった。すると翌日バーニイがバーラフロイグを飲む場面に遭遇した。時々こういう偶然があるから楽しくなる。

最初の一口を舌にのせて私は思った。"そう、これこそラフロイグだ。まさしく。どんな味か忘れてたけど、これがそうだ。どこにいようと、ぼくにはわかる"。少し間を置いて二口目を口にふくむと、この味をどう感じていたか思い出すことができた。これが嫌いではなかったことがはっきりした。五度目に口をつけたあたりで、なじみの効果が表われた。その味に慣れ、ほんとうにそれが好きなのかどうかなどという問いかけは、もはや適切なものではなくなった。言ってみれば、いとこのようなものだ。"おいおい、あいつはおまえのいとこじゃないか。なのに、どういうことなんだ。あいつが好きじゃないっていうのは? 好きも嫌いもあるものか。あいつはあんたのいとこじゃないか!"。

ラフロイグとはアイラ島産のシングル・モルトで独特というか強烈な味がする。人によっては「薬かよ、これ」と言うかもしれない。アイラ島シングル・モルトについては村上春樹の『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』に詳しい。村上春樹バーニイと同じようなことを書いている。

一くち飲んだらあなたは、「これはいったいなんだ?」とあるいは驚くかもしれない。でも二くち目には「うん、ちょっと変わってるけど、悪くないじゃないか」と思われるかもしれない。もしそうだとしたら、あなたは ― かなりの確率で断言できることだけれど ― 三くち目にはきっと、アイラ・シングル・モルトのファンになってしまうだろう。僕もまさにそのとおりの手順を踏んだ。

ミステリーとしては、結末が無理やり過ぎて褒められたものではないが、バーニイ・シリーズの良さはもっと他のところにあるので別に構わない。読んでいる間中、楽しい時間を提供してくれた。

泥棒は深夜に徘徊する〔ハヤカワ・ミステリ1802〕泥棒バーニイ・シリーズ (ハヤカワ・ミステリ 1802 泥棒バーニイ・シリーズ)
泥棒は深夜に徘徊する〔ハヤカワ・ミステリ1802〕泥棒バーニイ・シリーズ (ハヤカワ・ミステリ 1802 泥棒バーニイ・シリーズ)ローレンス・ブロック 田口 俊樹

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