エダニク@浅草九劇

とある食肉加工センター。

ある日、屠室で厳重に管理されているはずの、牛の延髄が紛失。
ここ別屠室の、屠殺用ナイフ研磨室も人の出入りや情報の行き来が慌しくなってきた。
この事件をきっかけに、初対面である取引先新入社員と加工センターの職人二人は、
屠畜という作業への言及や、企業間の駆け引き、立場の保守など、各々のアイデンティティに関わる問題をぶつけ合い議論を白熱させる。立ちこめる熱気と臭気。
「生」がたちまち「死」に、「生体」が次々と「物体」と化していくこの労働の現場で、男たちの日常は我々に何を問いかけるのか。

2009年に横山拓也が書き下ろした本作は再演を重ね多くの評判を呼び瞬く間に演劇界を震撼した。横山戯曲史上最も評価の高いこの作品を鄭義信がどう仕上げるか?もう期待しか存在しない。


脚本:横山拓也(iaku)
演出:鄭義信
出演:稲葉友 大鶴佐助 中山祐一朗阿佐ヶ谷スパイダース

『粛々と運針』を見て以来、横山拓也作品を追いかけるようになった。『エダニク』が色々なところで再演されているのも知っていた。『ヒトハミナ、ヒトナミノ』を観たタイミングで今回の再演のことを知り、チケットを取った。浅草ならペタンクに行けるということもある。
屠室での男3人芝居ということで、ヒリヒリとしたシリアスな芝居なんだと思っていたら、そうではなくて、ユーモラスなシーンが多かった。途中まで面白く観ていたのだが、中盤から冗長になって話が先に進まなくなってしまい、このあたりで眠くなってしまった。他の『エダニク』を観たことがないのだが、演出もちょっと過剰な感じがした。
何かの作業をしている場所に取引先のボンボンが来るという設定は『ヒトハミナ、ヒトナミノ』と同じだ。というか、『エダニク』の方が先なので、『エダニク』を進化させたのが『ヒトハミナ、ヒトナミノ』なのだろう。そして『ヒトハミナ、ヒトナミノ』の方が奥が深いし、ずっと面白かった。『エダニク』を指して「横山戯曲史上最も評価の高いこの作品」というのは個人的には疑問だな。9月にはiakuの本公演があるので、そちらに期待したい。

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