芸術とは何か?
日本を代表する劇作家で演出家の平田オリザと、彼が主宰する劇団・青年団。
『演劇1』は、その創作現場にカメラを向け「平田オリザの世界」を徹底解剖する。
台詞や動きがあまりに複雑かつ自然な平田作品を、即興の産物であると勘違いする観客もいる。しかし、台詞はすべて平田によって戯曲に書き込まれ、俳優の動きや仕草は細心の注意を払って練り上げられたものである。
したがって、稽古場は修羅場と化す。現実世界を原寸大で再現した、精密モデルのような超リアルな舞台の裏では、極めて不自然で徹底的な操作が行われているのだ。
「“本当の自分”などない。人間とは“演じる生き物”であり、あるのはペルソナだけだ」と平田は喝破する。
想田和弘監督は、戯曲の執筆、稽古、照明、美術、劇団運営の実際など、あらゆる活動に密着し、その哲学や方法論、組織論を描き出す。同時に、人類誕生以来、太古の昔から続いてきた「演劇」という営みに挑むのだ。
【監督】想田和弘
【キャスト】平田オリザ, 青年団,こまばアゴラ劇場の人々
2012年/日本,アメリカ/172分/東風/ブルーレイ上映
去年の12月の終わりに『演劇 vs. 映画』(想田和弘)を読んで以来、ずっとこの映画を観たいと思いつつ、なかなかジャック&ベティで上映してくれないのでやきもきしていた。約半年を経て、ようやく観れた。
平田オリザの演出の細かさは、先日見た岡田利規の抽象的な演出とは対照的だった。稽古の場面はもちろん面白かったのだが、仕込みのシーンや照明のチェックのシーンが実に興味深かった。小さい劇団では劇団員たちがみんなで仕込みを行うというのは知っていたが、実際に見るとみんな大工のようですごかった。地方に行って、自分たちで仕込んで、本番やって、バラしたあとの打ち上げでのビールは実に美味しそうだった。そりゃ美味いよなあ。
志賀さんの誕生日のサプライズ演出では、なんだか観ているこっちまで企みに加担しているようでドキドキしたね。無音のハッピーバースデーは本で読んで知っていたけど、なかなか良かったね。