大学生のいずみは、高校時代の同級生・裕司から「夜市にいかないか」と誘われた。裕司に連れられて出かけた岬の森では、妖怪たちがさまざまな品物を売る、この世ならぬ不思議な市場が開かれていた。夜市では望むものが何でも手に入る。小学生のころに夜市に迷い込んだ裕司は、自分の幼い弟と引き換えに「野球の才能」を買ったのだという。野球部のヒーローとして成長し、甲子園にも出場した裕司だが、弟を売ったことにずっと罪悪感を抱いていた。そして今夜、弟を買い戻すために夜市を訪れたというのだが―。第12回日本ホラー小説大賞受賞作。
「本屋のほんね」のid:chakichakiさんが絶賛していたので読んでみた。絶賛もむべなるかな。デビュー作とは思えないほどの完成度だ。表題作の「夜市」はもちろんいいんだけど、併録されている「風の古道」がまた素晴らしいんだよなあ。
「日本ホラー小説大賞受賞作」ということだけど、ホラーというよりはファンタジーなんだよな。「怖いのは嫌いだし」という理由でこれを読まなかったとしたらこんなもったいないことはない。かくいう私も「怖いのは嫌い」だが、この作品に出会えて良かったよ。次作にも大いに期待が持てる。
夜市 (角川ホラー文庫 つ 1-1) | |
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