今までの私の「村田喜代子体験」は、朝日新聞の連載で読んだ『人が見たら蛙に化れ』しかない。古物に魅せられた3組の男女が幻のお宝を追って、九州の山里から萩、ロンドン、フィレンツェへとさすらいの旅に出る話なのだが、これが滅法面白かった。いつか別の作品も読んでみたいと思いつつ今日に至り、新聞広告で目にしたのがこの『八つの小鍋』だ。
「村田喜代子傑作短篇集」と銘打たれているとおり、様々な賞を受賞した短編がズラリと並んでいる。村田喜代子初心者にとっては、これ以上の本はないだろう。
内容は「奇譚」といった感じの話が多い。それと、やたらに「おばあさん」が出てくる。それも体が海老みたいに「つ」の字に曲がったお婆さんが沢山出てくるのだ。「東京奇譚集」ではなくて「おばあさん奇譚集」とでも言うべきか。
不思議な味わいの話の中に人間の優しさや怖さがそれとなくまぶされている。いかにもリアルな小説というのもそれはそれで面白いが、日常に潜む非日常を感じさせてくれるこうした話を読むにつけ、「物語の持つ力」みたいなものを感じずにはいられない。
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