一人称単数(村上春樹)★★★★☆ 7/30読了

6年ぶりに放たれる、8作からなる短篇小説集
「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。しかしその切り口が増えていけばいくほど、「単眼」はきりなく絡み合った「複眼」となる。そしてそこでは、私はもう私でなくなり、僕はもう僕でなくなっていく。そして、そう、あなたはもうあなたでなくなっていく。そこで何が起こり、何が起こらなかったのか? 「一人称単数」の世界にようこそ。

久しぶりに出た短篇小説集、楽しく読みました。収録作品に「品川猿の告白」があるのを知って、『東京奇譚集』の「品川猿」を読み返しておき(すっかり忘れていた)、「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」ではビートルズを、その他の作品でも出てくる音楽を聴きながら読んだ。しっとりした作品、不思議な作品、人を喰ったような作品など、バラエティにも富んでいた。しかも以前よりも小説が上手くなっている気がする。どれか1つと言われたら「品川猿の告白」かなあ。とても面白かった。