恋する幇間(たいこ)(吉川潮)★★★☆☆ 1/16読了

「おさよの身の上」―嘘の身の上話で客の気を惹く上野のけころの哀しさ。「おみつの橋」―通りすがりの絵師に裸像を描かせた谷中の女の性。「妓夫太郎の誠」―吉原生まれの客引きが花魁に寄せる一途な思い。「おろくの正体」―「まんじゅう舟」の婀娜な年増が匂わす謎の過去。「お染の手管」―客を騙した品川の売れっ妓が本気で惚れた男の素性。「恋する幇間」―真っ直ぐな幇問と純な芸者の許されざる苦界の恋。「おすぎの文」―情夫に裏切られた女の味方は居残り男と粗忽者。落語・芝居でお馴染みの色里を舞台に男女の機微を描く江戸人情廓噺。傑作時代物短編集。

談志とも懇意の仲で立川流の顧問も務めるだけあって、落語への造詣は並ではない。そんな著者が落語を題材にして書いた時代小説集。
色々な落語の噺があちこちにちりばめられていて落語ファンには堪らない短篇集となっている。もちろん落語にあまり詳しくなくても普通の時代物の短篇として十分に楽しめる。
どの話も良かったけど、特に良かったのは「妓夫太郎の誠」かな。これは落語「付き馬」の後日談になっている。廓の若い衆が客に騙されて図抜け大一番小判型の早桶を買わされてしまうところまでは落語と同じ。その早桶を廓に持ち帰った若い衆がその後どうなったかという話なのだ。そういうことを考えるのも楽しいよね。
落語以外にも「マディソン郡の橋」のパロディだったり、山本モナと二岡の不倫騒動を盛り込んだ話なんかがあったりして、かなり洒落が利いている。その辺のことはあとがきに書いてあるので、あとがきから先に読んだほうが楽しめるかもしれない。

恋する幇間(たいこ)
恋する幇間(たいこ)吉川 潮

ポプラ社 2008-12
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