花まんま(朱川湊人)★★★★☆ 2/21読了

母と二人で大切にしてきた幼い妹が、ある日突然、大人びた言動を取り始める。それには、信じられないような理由があった…(表題作)。昭和30~40年代の大阪の下町を舞台に、当時子どもだった主人公が体験した不思議な出来事を、ノスタルジックな空気感で情感豊かに描いた全6篇。直木賞受賞の傑作短篇集。

『小さいおうち』に続いて直木賞受賞作。朱川湊人の小説を読むのは初めて。全編「奇譚」とも言えるちょっと不思議なお話だ。ただ、現実離れしたファンタジーになってしまうわけではない。大阪の下町が舞台で子供が主人公っていう設定が利いている。直木賞も納得の面白さだった。
全ての短編に「死」が絡んでいるのだが、それほど重くはならず、むしろ読後感は爽やかだ(「妖精生物」だけはざらりとした感触のビターエンドだけど)。
一編だけ選ぶとしたら・・、やっぱり表題作の「花まんま」かなあ。妹思いのお兄ちゃんが何ともいえずいいね。

花まんま (文春文庫)

花まんま (文春文庫)