葬式の時、いつも考えることがある。
部屋を囲った白黒の幕が、シマウマを連想させるのだ。
でっかいシマウマの横で自分がお焼香をしてると思ったら、
なんだかおかしくてたまらなくなる。
参列者は皆ゼブラカラーの服を着て、シマウマ様を
崇めているようにも見える。
亡くなった方もきっと、この大きすぎるシマウマに乗って
天国へと旅立つのだろう。
それにしてもどうやってシマウマに乗ったのだろう。
きっと脚立をつかったに違いない。
そんなことを考えながら、私は泣かないようにしています。作・演出 田村孝裕
CAST
弘中麻紀(ラッパ屋) 星野園美(石井光三オフィス)
今井千恵 吉田麻起子(双数姉妹)
瓜生和成(東京タンバリン) 冨塚智 平野圭
冨田直美 恩田隆一 和田ひろこ
野本光一郎 津村知与支(モダンスイマーズ)
ラッパ屋の「妻の家族」、グリングの「ヒトガタ」に続き今回の「ゼブラ」において「お通夜3部作」が完結した(個人的にね)。この3作全てに弘中麻紀が出ている。しかもみんなおんなじ様な役なんだよな。
セットは昭和のお茶の間。透明な壁がある設定なので、玄関からの廊下や台所も見えるようになっている。これは「コルトガバメンツ」の時と同じような仕掛けだ。昭和のお茶の間や台所を再現した舞台装置はなかなか見事だった。テレビとか冷蔵庫とか飾り戸棚とかね。
物語は四姉妹の母親が亡くなる前後の話だが、昔の話を所々でうまく挿入している。それに姉妹それぞれの夫や婚約者、浮気相手、近所の与太郎、葬儀屋などが絡んでくる。前回のONEOR8の公演には男優しか出ていなかったので、女優は初めて見た。まあ、可もなし不可もなしってところかな。和田ひろこは劇団のサイトのプロフィールの写真では可愛いのだが、実際はそれほどでもなかったなあ。ONEOR8の男優陣は前回同様なかなか良かったが、客演の二人が更に良かった。長女の夫役の瓜生和成(東京タンバリン)と葬儀屋の柿沼ブラザーズの兄役の津村知与支(モダンスイマーズ)だ。この二人は良かったねえ。特に津村知与支と柿沼ブラザーズの弟役の野本光一郎のコンビは息が合っていて面白かった。柿のシーンでは舞台上でホントに××しちゃうとは思わなかった。東京タンバリンとモダンスイマーズの舞台もいずれ観に行きたい。
人物関係なんかはグリングの「ヒトガタ」によく似ていた。ヤンキーの夫婦がいたり、変な喋り方をする奴で出てくるところなんかはそっくりだ。「ゼブラ」がみんな同じような年齢の俳優ばかりなのに対して、「ヒトガタ」の方は辻親八と井出みな子というおじさんとおばあちゃんが出ている分、芝居に厚みはあった。脚本の深みのような点でも「ヒトガタ」の方が上だろう。ただ、もちろん「ゼブラ」には「ゼブラ」なりの良さがあった。ラスト間近で三女の奈央(今井千恵)がたった一人残った茶の間で昔を回想するシーンがある。四女が小学校に上がる日、お祭りの浴衣を取り合う場面、奈央が高校受験に向かう朝などを奈央以外の姉妹と母親が演じるのだ。ここはちょっと泣けたね。あまり感情移入してしまうと本当に泣きそうだったので、抑えたもんな。
それにしてお客さんいっぱい入ってたね。通路にまで椅子持ってきて入れちゃうんだもんな。消防法上どうなんでしょう。火事なっても外に出られないよ。通路までびっしりなんだから。まあその時は舞台から逃げるしかないか。ONEOR8の新作公演は、やはりシアタートップスで来年の4月とのこと。きっとまた観に行くでしょう。