悪果(黒川博行)★★★★☆ 11/10 読了

大阪今里署のマル暴担当刑事である堀内と相棒の伊達の日常が超リアルに描かれている。と言っても、マル暴担当刑事の日常なんて知らないから本当にリアルかどうかは知りようがないんだけど、描写が真に迫っているのは間違いない。
前半の山場は賭場のガサ入れだが、このガサ入れの段取りが微に入り細を穿って書かれていて臨場感たっぷりだ。小説というのは非日常を味わえる最も手軽な娯楽だ。小説の中でなら、空飛ぶヒーローになることもできるし、悲恋のヒロインになることもできる。それがこの本の場合はマル暴担当刑事になってヤクザと渡り合うことができるのだ。実生活ではマル暴担当刑事ともヤクザとも関わり合いを持ちたくないが、小説の中でマル暴担当刑事になってみるのは意外と悪くない。「ガタガタ抜かしてると、いわすぞこら」とか言ったりしてね。
中背中肉の堀内に対して、柔道をやっている伊達はガタイが良くて二分刈りなので、刑事よりもむしろヤクザに近い。この二人の掛け合いも本書の魅力の一つだ。仕事の上ではお互いに助け合うが、相手がどんなシノギをして副収入を得ているかには立ち入らない。この辺の距離感もリアルだ。
後半は謎解きの要素も強くなり、さすがにサントリーミステリー大賞出身と思わせてくれる。黒川博行は久し振りに読んだけど、やっぱり大阪弁の会話が素晴らしいね。

悪果
悪果黒川 博行

角川書店 2007-09
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