遊園地再生事業団『ニュータウン入口』(シアタートラム)

[作・演出・美術] 宮沢章夫
[作曲] 桜井圭介

[出演] 若松武史
     齊藤庸介/佐藤拓道/鎮西猛/鄭亜美/時田光洋/南波典子/
     二反田幸平/橋本和加子/三科喜代/山縣太一/
     杉浦千鶴子/上村聡/田中夢/他

戯曲の第一校をPDFで読んだ時には、内容をほとんど理解できなかった。これを舞台にして面白くなるんだろうかと心配だったのだが、実際に観てみるとそれは杞憂に終わった。内容がかなり書き換えられており、笑いの要素が増えていたからだ。それでも訳が分からない部分は多いのだが、やはりテクストだけを読むよりも、役者が動いてくれたほうが格段に分かりやすいし、ギリシャ悲劇「アンティゴネ」を軽く予習しておいたことも役に立った。
本当は最前列だったのだが、補助席がその前に出てしまったので前から2列目。それでもほぼ中央なので絶好のポジションだった。舞台装置はシンプル。分譲地を表している格子状の平面に土が配されているところとそうでないところが互い違いになっている。そして奥には鉄骨で作られた鳥居のようなアーチがある。最初に舞台中央に自転車が置かれており、ちょっと『モーターサイクル・ドン・キホーテ』を思い出したが、自転車は割とすぐにかたされてしまう。
宮沢章夫のブログで、「鄭は、ちょっとサービスな衣装である」とあったのを覚えていて、実は密かに期待していた。ショートパンツに生足でした。その鄭亜美が舞台中央の一番前に立った時には、その素晴らしいお御足を堪能させてもらいましたw。鄭亜美って顔が小さくて可愛いね。
話の内容をうまくまとめるのは私には不可能だ。ギリシャ悲劇や発掘ねつ造事件の犯人や日本ダンス普及会や鳩男が出てきたりして、多義的にして不可解な舞台になっている。金曜日の朝日の夕刊に扇田氏による劇評が載った。読まずに舞台を観て帰ってから読んで唸った。よくぞあの芝居をこれだけの文字数で過不足なくまとめられるなと。さすがプロだ。
全体的な話は難解だが部分的に宮沢章夫らしい笑いがちりばめられている。南波典子のドクターペッパーと能は笑ったなあ。カメラマンがいて、舞台の裏で芝居をしている人たちを写している。それがスクリーンに映し出される。手前の芝居と奥の芝居で重層的になっているわけだ。宮沢章夫は映像を使うことに愉楽を感じているようだが、正直私は飽きました。チェルフィッチュの『エンジョイ』もそうだったしな。もうちょっと違うところで勝負して欲しい。
チェルフィッチュといえば、山縣太一は宮沢章夫の舞台でもチェルフィッチュの山縣太一だった。何だか動きが妙なんだよな。南波典子も『エンジョイ』で初めて見たが、今回の方が良かったね。詩のような長い独白があると聞いていたが、「あれがそうだったの」って感じだった。上村聡は『鵺/NUE』よりも大分良くなった印象だが、田中夢はいつまで経っても生硬な感じがぬぐえない。若松武史は抜群の存在感で演技もおかしくて素晴らしかった。
宮沢章夫の舞台は、『モーターサイクル・ドン・キホーテ』、『鵺/NUE』に続いて3本目。今回が一番良かったね。次作も期待したい。