「折々のうた」最終回

詩人の大岡信さん(76)による本紙1面の連載「折々のうた」が31日、最終回を迎える。朝日新聞創刊100周年企画として始まったのが、1979年1月25日。古今の詩歌を縦横に取り上げ、足かけ29年に及んだ長期連載の終了に、「毎朝一番に読む記事だった」「寂しくなる」などと惜しむ声が、全国から寄せられている。

 何度か休載期間をはさみ、最終回が6762回目。約4600首を集めた「万葉集」をはるかに上回った。大岡さんは、はればれとした表情で「とにかくおしまいまで来られて、ほっとしています」。

1979年というと、私が12歳のときか。実家でも朝日だったから、新聞を読む習慣が付いて以来ずっと「折々のうた」を読んできたことになる。あって当たり前だと思っていたものが、一年おきの連載になると、休載している一年間はなんだか心に穴が開いたような気持ちだった。そしてとうとうこの日が来てしまった。
最後に選ばれたのは田上菊舎の「薦着ても好きな旅なり花の雨」。特別に有名な句や歌を持ってこず、淡々とした書き振りだったが、この句に大岡信の心持ちが表れているような気がする。
明日からはもう「折々のうた」を読めないのだと思うと何だか途方に暮れるような思いだが、後日、自選の秀作集が刊行されるそうなので、それを楽しみに待つことにしよう。