殺人作家同盟(ピーター・ラヴゼイ)★★★★☆ 3/31読了

昔はよく「EQ」というミステリー雑誌で短篇を読んでいたが、長篇を読むのは久し振りだ。ダイヤモンド警視シリーズが有名だが、この作品はノン・シリーズものである。

表紙の裏からあらすじを引用すると・・

「出版社を経営するエドガー・ブラッカーが放火により殺された。彼は歯に衣着せぬ物言いで作品を批判したり、出版の約束を反故にするなどして作家から恨みをかっていた。容疑者は12人、アマチュア作家の集まり<チチェスター作家サークル>の面々に絞られた。無実を訴えるメンバーの身辺を、サークルの新入りであるボブ・ネイラーは調べ始めるが、まもなく第二、第三の犠牲者が・・・」


典型的なフーダニット・ミステリーである。サークルのメンバーの一部が事件解決に乗り出し、物語の中盤で警察側の捜査も描かれるようになる。警察が出てくるまでがちょっとまどろっこしいのだが、出てくると俄然面白くなってくる。というのもボグナーからやってきたヘン・マリン警部が実に人間味があって魅力的なのだ。地元チチェスターの警部を差し置いて捜査の責任者に任命されたものだから、地元の署の刑事たちとの軋轢が結構あり、その辺のやりとりも物語のひとつの面白さになっている。

ミステリーファンを意識した著者のサービス精神にも「ニヤリ」とさせられる。

「あなたも知っているように、わたし、暇を見つけてはアガサ・クリスティーのテープを聴いているでしょ。デイム・アガサはね、物語がこんなに進行したあとで犯人を登場させるようなことは、けっしてしない人なのよ。だから、わたし、○○○○が犯人でないことを願ってるの。警察がずっと相手にしてきた他の連中の一人であってほしいの」

これは物語終盤でのヘン・マリン警部のセリフである(実際には「○○○○」には人名が入る)。このように本格ミステリーのコードを守りながら物語は進み、最後にはきっちり意外な犯人を提示して見せてくれた。決してガチガチの本格ミステリーではなく、ウィットに富んだ文章で物語は彩られているので読む楽しみも十分にある。目の肥えたミステリーファンにも、初心者にも等しくオススメできる一冊である。

殺人作家同盟
殺人作家同盟
posted with 簡単リンクくん at 2007. 4. 1
ピーター・ラヴゼイ著 / 山本 やよい訳
早川書房 (2007.2)
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