ハーレムの高校に通う十六歳の少女ジェニーヴァが博物館で調べものをしている最中、一人の男に襲われそうになるが、機転をきかせて難を逃れる。現場にはレイプのための道具のほかに、タロットカードが残されていた。単純な強姦未遂事件と思い捜査を始めたライムとサックスたちだったが、その後も執拗にジェニーヴァを付け狙う犯人をまえに、何か別の動機があることに気づく。それは米国憲法成立の根底を揺るがす百四十年前の陰謀に結びつくものだった。そこにジェニーヴァの先祖である解放奴隷チャールズ・シングルトンが関与していたのだ・・。“百四十年もの”の証拠物件を最先端の科学捜査技術を駆使して解明することができるのか?ライムの頭脳が時空を超える。
もはや安定したレベルに達しているので安心して読める。自分がライムの研究室で一緒に捜査しているような気分になる。ここまでシリーズが続くとマンネリになりがちだが、ジェニーヴァという少女の人物造形が巧みだったり、シリーズ常連刑事のロン・セリットーがとあるピンチに陥ったり、ライム自身に変化が起きたりと、読者を飽きさせない。もちろん、お得意の「ひねり」は各所で効いている。140年前の陰謀と結びつけようというのがやや強引でそこが難点だが、それでも十分に楽しめた。
12番目のカード | |
ジェフリー ディーヴァー Jeffery Deaver 池田 真紀子 文藝春秋 2006-09 売り上げランキング : 1310 おすすめ平均 ファンにとってはこたえられない、意欲的な大作 Amazonで詳しく見る by G-Tools |