サウスバウンド(奥田英朗)★★★★★ 6/24読了

小学校六年生になった長男の僕の名前は二郎。父の名前は一郎。誰が聞いても「変わってる」と言う。父が会社員だったことはない。物心ついたときからたいてい家にいる。父親とはそういうものだと思っていたら、小学生になって級友ができ、ほかの家はそうではないらしいことを知った。父はどうやら国が嫌いらしい。むかし、過激派とかいうのをやっていて、税金なんか払わない、無理して学校に行く必要などないとかよく言っている。家族でどこかの南の島に移住する計画を立てているようなのだが・・。型破りな父に翻弄される家族を、少年の視点から描いた、長編大傑作。

最ッ高に面白かった! 少年の成長譚ということであれば、それこそ枚挙にいとまがないわけだが、父親が元過激派という設定は前代未聞だろう(父親が偉丈夫で息子とやたらにプロレスするという点では椎名誠の『岳物語』をちょっと彷彿とさせる)。
あら筋は上記の通りだが、本作は大きく2つに分かれている。移住する前の「中野編」と移住後の「西表島編」だ。どちらも二郎の友達が実に生き生きと描かれている。友達だけでなく、二郎を取り巻く大人たちも実に魅力的だ。二郎は風変わりな父親を時には尊敬し、時には反発しながら、徐々に自分の考えというものを確立していく(また、この父親「上原一郎」が格好いいんだな)。
西表島への移住が、梅雨が明けるか明けないかという時期なので、ちょうど今の季節にマッチする。「今」読むのがベストでしょう! 絶対に読んで損はしませんよ。

サウス・バウンド
サウス・バウンド奥田 英朗

角川書店 2005-06-30
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