オルモスト・ムーン 月が欠けゆく夜(アリス・シーボルト)★★★★☆ 3/10読了

ラブリー・ボーン」の著者、5年ぶりの最新作!
愛憎なかばする母と娘。介護に疲れた娘が選んだ究極の選択後の24時間

自分の母親を殺すのは簡単なことだった……。47歳のヘレンは88歳になる母を衝動的に殺してしまった。
母は父が死んで以来ここ20年ほど一歩も家から出たことがない。母の世話は父の死以来、ヘレンの義務だった。元々変わり者だった母は年老いてますますヘレンに毒づくようになり、母への献身的な介護が愛によるものか、憎しみによるものかわからなくなってしまっていた……。
ついに究極の選択をとってしまってからの24時間に錯綜するヘレンの47年間の母との日々と、ヘレン自身の娘と夫との生活、次第に静かに壊れていくある女性の気持ちを克明に追った問題作。

タイトルの「オルモスト・ムーン (Almost Moon)」は主人公ヘレンが子供の時に父親に掛けられた言葉からきている。

月というのはいつだって完全な形でそこにある。ただ、その姿をいつでも見ることができるわけではない。私たちが見ているものは、ほぼ月に近いもの、あるいはなんと言ったらよいか、ほんの少しだけ月でないもの、だっていうことさ。残りは、隠れていて見えないだけだ。

正直、読んでいて楽しい本ではない。だけど読ませる。現実の時間は1日分しか進まないのだが、そこに至るまでの間の家族の話が徐々に明らかになって行く様が読み手の心を捉えるのだ。細かいエピソードが実にリアルなんだよな。
段々追いつめられていくヘレン。もはやここまでかという最後の最後でほのかな希望の光が見えて終わる。「月が欠けゆく夜」という副題はなかなか深いね。

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