東京奇譚集(村上春樹)★★★★☆ 9/18読了

アフターダーク』は個人的にはイマイチだったのだが、今回の短編集は「さすが」と唸ってしまった。『新潮』掲載の4篇に書き下し1篇を加えた5篇からなっている。
例えば冒頭の「偶然の旅人」。ジャズにまつわる村上春樹の体験談をマクラに、ゲイの調律師が体験する不思議な物語が綴られているのだが、非常にスタイリッシュでありながら、心の深いところを打つものがある。
読みながら、この短篇が英訳されて、ニューヨーカーなどの海外の雑誌に掲載されているところを想像してみた。全く違和感がない。間違いなく海外の読者にも受け入れられるであろうと自信を持って思える(私が自信を持っても仕方がないのだが)。要するにインターナショナルレベルの作品なのだ。
(なんと「収録作品の「偶然の旅人」と「どこであれそれが見つかりそうな場所で」は、すでに英訳がHarper's Magazine (7月号)、The New Yorker(5月2日号)に掲載されて」いることを後から知った!)
今回の5篇には、みな何かしらの「心の闇」を抱えた人物が出てくる。しかし、もちろん話自体は決して暗いものではない。特に書き下ろしの「品川猿」は村上春樹特有のユーモアにニヤリとすることしばしばだった(「やみくろ」とか「かえるくん」とか村上春樹はこの手のキャラクターがホント好きだよな)。
世界でも一流のストーリーテラーの一流の作品集と言っていいだろう。


東京奇譚集
4103534184村上 春樹

新潮社 2005-09-15
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