街とその不確かな壁(村上春樹)★★★★★ 4/25読了

その街に行かなくてはならない。なにがあろうと――〈古い夢〉が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された“物語”が深く静かに動きだす。魂を揺さぶる純度100パーセントの村上ワールド。

私の一番好きな村上作品が『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』なので、その元になった『街と、その不確かな壁』を書き直したとされる本作には期待していた。
3部構成の第1部がほぼ「世界の終り」。第2部で全く新しい展開となり、短めの第3部で「世界の終り」が終わる。書きたいことは山ほどあるが、内容には触れられないので、具体的なことは何も書けない。コロナ禍の世界なども象徴しているが、基本的にはよく出来たお伽噺である。その、とてもよく出来たお伽噺を堪能した。村上春樹は『世界の終り〜』のことも「壁」の書き直しとして十全には納得していないようだが、私はそうは思わない。本作を読んで、『世界の終り〜』を読み返したくなった。