「7日間ブックカバーチャレンジ」5冊目

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(村上春樹

私の初「村上春樹」は『ノルウェイの森』。読んだのは、調べてみると大学2年生のときだったようだ。それまでは推理小説という所謂「オチ」のある話ばかり読んでいて、「オチ」のない話、つまり文学作品を読むのはほとんど初めてだった。大変に感銘を受けた当時の私は、そこから『風の歌を聴け』に遡って頭から読んでいき、この本に辿り着いた。この本は確か大学の生協の本屋で買ったと思う。この表紙の版も今では珍しいだろう。とにかく圧倒的に面白かった。静の「世界の終り」と動の「ハードボイルド・ワンダーランド」という2つの世界が交互に描かれて最後に融合するという構造も素晴らしかったし、細かなディテールにもいちいち刺激を受けた。特に、「世界の終り」パートの僕が一角獣の頭蓋骨から夢を読み解く仕事をしているというのが好きだったし、「ハードボイルド・ワンダーランド」パートの最後の方、レストランでじっくりメニューを見ながら食べるものを決めて、大量に注文したものをきれいに平らげた末にシェフが挨拶に出てきてお礼を言う場面が好きだった。
この本でも読み返したし、その後全集を買って読んで、その全集も読み返した。その時々によって、実際の結末とは違う結末を思い描いていたこともあった。
この本によって、村上春樹好きが確定的となり、翻訳した本も含めてほぼ全てを読んできた。ただ、今でも私が一番好きなのはこの作品である。

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