『1Q84』から7年――、
待ちかねた書き下ろし本格長編
その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入り口近くの、山の上に住んでいた。夏には谷の奥の方でひっきりなしに雨が降ったが、谷の外側はだいたい晴れていた……それは孤独で静謐な日々であるはずだった。騎士団長が顕(あらわ)れるまでは。
最近の作品(「女のいない男たち」「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」)を読んで、村上春樹も普通の作家になっちゃったなあなんて思っていたが、どっこい来ましたよ思い切り村上印の本が。各所でも囁かれているように、本作はベスト盤的な要素が強い。羊男的なものと井戸的なものという2大モチーフはもとより、村上春樹的なモチーフが満載である。熱心な読者であれば、「ああ、これはあの作品のあのシーン」というような既視感を何度も覚えただろう。熱心な読者の1人である私は本作をとても楽しんで読んだ。
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