1Q84 BOOK 2(村上春樹)★★★★★ 6/10読了

1949年にジョージ・オーウェルは、近未来小説としての『1984』を刊行した。
そして2009年、『1Q84』は逆の方向から1984年を描いた近過去小説である。
そこに描かれているのは「こうであったかもしれない」世界なのだ。
私たちが生きている現在が、「そうではなかったかもしれない」世界であるのと、ちょうど同じように。

久しぶりの村上春樹の長編を堪能した。今までの作品、翻訳、活動などの諸々の要素が凝縮された集大成のような作品となっている。類い希な比喩や主人公の「やれやれ」という発言など、ファンであればニヤリとしてしまう要素もてんこ盛りだ。
BOOK 1を読み終えたときには『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を超えるかもしれないと思ったが、BOOK 2を読み終えた現段階では、超えるには至っていないと言わざるを得ない。
「青豆」の章と「天吾」の章が交互に展開する形式は『世界の終り・・』と同じなのだが、この2つの章の差異が少ない。『世界の終り・・』では明らかに「動」と「静」の対比があり、この差が非常に大きかったので、最後に2つの章が交わる際の感動も大きかった。『1Q84』はそこのところがちょっと弱い。
しかし、結論を出すのはまだ早いかもしれない。本作は「『ねじまき鳥クロニクル』を超える、村上さんの最長の小説になりそうだ」(毎日新聞のインタビュー)という話があった割には短い。そして、上巻、下巻とせずにBOOK 1、BOOK 2となっている。さらに言えば、BOOK 1が<4月-6月>、BOOK 2が<7月-9月>となっているということは、BOOK 3 <10月-12月>、BOOK 4 <1月-3月>が出てもおかしくない。というか、出るでしょう、きっと。
BOOK 2は思わせぶりな終わり方をしている。BOOK 3とBOOK 4を楽しみに待ちたい。

1Q84 BOOK 2
1Q84 BOOK 2村上春樹

新潮社 2009-05-29
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