小劇団を主宰する僕“竹田武志”のもとに、父から連絡があった。余命三ヵ月だという―。自意識が炸裂する僕と、うまくいかない「劇団」、かわっていく「恋人」、死に行く大嫌いな「父親」。周囲をとりまく環境が目まぐるしく変わる中、僕は故郷の福岡と東京を行き来しながら、自分と「家族」を見つけなおしていく。不完全な家族が織りなす、歪だけど温かい家族のカタチ。
小劇場系の芝居が好きなので、松居大悟の名前は知っているが、彼が主宰するゴジゲンの舞台は残念ながら観たことがない。著者の略歴を調べると、本書の主人公は著者の分身のようだ。小劇場系の演出家がアイドルを主役にした商業演劇の演出で悩むところなどは、なかなかにリアルだった。そんな主人公の、劇団員や恋人、家族との関わりが描かれている。既読感は漂うが、まずまず面白かった。ゴジゲンの舞台もいつか観てみたい。