かつて愛し合い、今は離ればなれに生きる「私」と「ぼく」。失われた日記、優しいじゃんけん、湖上の会話…そして二人を隔てた、取りかえしのつかない出来事。14通の手紙に編み込まれた哀しい秘密にどこであなたは気づくでしょうか。届くはずのない光を綴る、奇跡のような物語。
小川洋子も堀江敏幸も好きなので、私にとっては一粒で二度美味しい贅沢な本である。手紙のやり取りという形を借りた連作短編集となっている。2人合わせて全部で14通。先攻の小川洋子が提示した物語に後攻の堀江敏幸が呼応し、発展させる。それに対してまた小川洋子が新たな光を当て、掘り下げる。高段者同士の棋士が紡ぎあげる棋譜のようでもあり、手練れの歌人たちが巻く歌仙のようでもある。堪能しました。