雲をつかむ話(多和田葉子)★★☆☆☆ 6/20読了

人は一生のうち何度くらい犯人と出遭うのだろう――。
わたしの二ヵ国語詩集を買いたいと、若い男がエルベ川のほとりに建つ家をたずねてきた。彼女へのプレゼントにしたいので、日本的な模様の紙に包んで、リボンをかけてほしいという。わたしが包装紙を捜しているうちに、男は消えてしまった。
それから一年が過ぎ、わたしは一通の手紙を受け取る。
それがこの物語の始まりだった。

エッセイなのかフィクションなのかの境界が曖昧で、まさに雲をつかむような話である。ドイツとフランスの違いはあるが、堀江敏幸とよく似ている。「犯人と出遭う話」というのがなかなか面白い。全体的には、やや退屈な本なのだが、時々面白い挿話があって引き込まれた。