不時着する流星たち(小川洋子)★★★☆☆ 3/28読了

盲目の祖父は、家中を歩いて考えつく限りの点と点を結び、その間の距離を測っては僕に記録させた。足音と歩数のつぶやきが一つに溶け合い、音楽のようになって耳に届いてくる。それはどこか果てしもない遠くから響いてくるかのようなひたむきな響きがあった――グレン・グールドにインスパイアされた短篇をはじめ、パトリシア・ハイスミスエリザベス・テイラー、ローベルト・ヴァルザー等、かつて確かにこの世にあった人や事に端を発し、その記憶、手触り、痕跡を珠玉の物語に結晶化させた全十篇。硬質でフェティッシュな筆致で現実と虚構のあわいを描き、静かな人生に突然訪れる破調の予感を見事にとらえた、物語の名手のかなでる10の変奏曲。

実際の人物や物事から想起した物語集。さすが小川洋子というしかない世界観。この小説を読んでいるときは、煩雑な日常から離れて静謐な物語世界に入り込むことができた。

不時着する流星たち
不時着する流星たち小川 洋子

KADOKAWA 2017-01-28
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