チェルフィッチュ「ゾウガメのソニックライフ」@神奈川芸術劇場 大スタジオ

岸田國士戯曲賞受賞作家、岡田利規の書き下ろしによる新作。
演劇の新たな地平を常に切り拓いて来たチェルフィッチュが、活動拠点の横浜で、さらなる挑戦!


新しい作品を作るときは、常に新しい形式を伴っていたいものだと思います。
真に新しい、という意味ではありません。そんなものあるのかどうか、それは大いに疑わしいから。
自分たちにとっての新しい試みが必ずある、という程度の意味です。
それだって毎回必ずできているわけではありません。でも、できるだけそうでありたい。
今回もまたそうでありたいと考えているわけです。
今回は、わたしたちがわたしたちの生のありようを捉えようとする際、大抵の場合は複数の捉え方のあいだでゆらいでしまい、どうしたらいいか分からなくなってしまうということをできるだけ正直に描写するような作品にしたいと思っています。
言っている意味がよく分からないかもしれませんが、それは、僕にもよく分かっていないからです。
さまざまな矛盾がぶつかりあってにっちもさっちもいかないような作品、を作りたい。
たとえば、矛盾の現れのひとつとしてすでにあるのが、このタイトルです。速さと遅さが混在しています。


岡田利規


スタッフ・キャスト
作・演出/岡田利規
出演/山縣太一、松村翔子、足立智充、武田力、佐々木幸子


公演期間:2011.2.2(水)〜2.15(火)
会場:神奈川芸術劇場 大スタジオ

オープンしたての神奈川芸術劇場(KAAT)。新しくて気持ちいいね。
指定席ではなく整理番号順で入場の自由席。早い番号のチケットだったので、いい席に座れた。かなりシンプルな舞台装置。上手上方にスクリーンがあり、下手にカメラが設置されているので、そこで撮った映像がスクリーンに映し出されるのだろう。
基本的には佐々木幸子が主体となって話は進む。と言っても、進んでるんだか何なんだかよく分からなくなってくる。相変わらず、みんな意味があるのかないのかよく分からない不可思議な動きをしているし。前半はちょっと進みが遅かった。隣の男性はすぐに寝てしまったが(後半は起きていた)、私も途中うとうとしていた。暗い中でセリフも発せず、ただ動いているだけとかいうシーンも結構あったからなあ。
後半はもうちょっとユーザーフレンドリーというかオーディエンスフレンドリーになってくる。山縣太一が定住に関する持論を述べる時のアップは麻原に似ていたね。山縣の妙なニヤニヤ笑いが観客の笑いを誘っていた。ラストは珍しく、茶目っ気のあるものだった。
パンフレットに載っているインタビューで岡田利規はこう語って

だから、今回もまず『わたしたちは無傷な別人である』ではやらなかったことをやろう、と考えたわけです。で、前作はあまりにストイックというか、体脂肪率3%みたいに無駄のないパフォーマンスすぎたように思ってるんですが、だからもうちょっといい意味での適当さがほしいな、と。

確かに『わたしたちは無傷な別人である』は観ているこちらもちょっとしんどかった。それに比べれば、今作の特に後半は割合楽しく観られた。佐々木幸子の髪形と眼鏡は可愛かったし、衣装も良かったね。詳しいことは書けないけど、なかなか示唆に富むセリフや設定があって、考えさせられるものがあった。上演時間は90分。カーテンコールでの山縣太一は妙にテンションが高かったな。