宮本輝全短篇 下(宮本輝)★★★☆☆ 5/21読了

「泥の河」で太宰治文学賞、続いて「螢川」で芥川賞を受賞して以来、人間の生きるという命題を鮮やかな人物造形と細やかな情景描写で多くの読者を魅了し続ける小説の名手宮本輝。
幼年期と思春期の二つの視線で、二筋の川面に映る人の世の哀歓を詩情豊かに描き出す名作「泥の河」「螢川」のほか、「幻の光」「星々の悲しみ」「五千回の生死」「真夏の犬」「胸の香り」を収録。
さらに、本作発売時点で単行本未収録の最新作「スワートの男」までの全短編39編を上下巻にまとめました。
また、早逝の画家・有元利夫の版画を装画として使用。
接ぎ表紙の美装愛蔵本で、決定版宮本輝の世界。
下巻収録24編。

短篇と呼ぶにはやや長い作品が多かった「上」に比べて、「下」では文字通りの長さの短篇が多い。但し、たとえ短くても「水だと思って飲んだら血だった」と感じさせる作品ばかりである。特に著者10歳から12歳くらいの尼崎〜大阪時代を回想するような作品が印象に残る。
なかでも「力道山の弟」の出来栄えが素晴らしい。「上」では「火」が良かったが、「力道山の弟」はそれに匹敵する。

宮本輝全短篇 下
宮本輝全短篇 下宮本 輝

集英社 2007-11-22
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