同じ著者の『ワインの個性』の方を最近知り、その本の前にこの『ワインの自由』を書いていたことも知ったので、先に『ワインの自由』を読むことにした。著者は冒頭でこう書いている。
「自由」とは、他から影響、拘束、支配などを受けずに、自らの意思や本性に従うことをいいます。
その言葉通り、本書には今までの通例に囚われない自由な物言いが溢れている。例えば、「料理とワインの相性」という節は「私は、料理とワインの組み合わせについていろいろと講釈をたれるひとが嫌いです」で始まり、「自分が好きな料理を食べながら、自分の好きなスタイルのワインを飲むのがそのひとにとってベストの組み合わせのはずで、その組み合わせを知っているのは自分だけなのです」という文章で結ばれている。
本書からは、ワインの産地、葡萄栽培、醸造、熟成、サーヴィス、とワインにまつわる一通りの知識を得ることができる。そして何よりも素晴らしいのは、それらのワインにまつわる様々な通例を鵜呑みにするなという提言がなされていることだ。
「今日開けた○○は明らかに若開けだった。飲み頃は2、3年後か」なんていう文章をよくワイン系のブログで見かけるが、そんなこと分かるのかよといつも思う。飲みたいワインを飲みたいときに飲めばいいじゃないか。そして、その開けたときの味わいを愉しめばいいじゃないか。
知識は知識として知った上で、あまりがんじがらめにならずに自由にワインを愉しめばよいと改めて思わせてくれた一冊だった。