いい子のあくび(高瀬隼子)★★★☆☆ 12/2読了

芥川賞受賞第一作。
公私共にわたしは「いい子」。人よりもすこし先に気づくタイプ。わざとやってるんじゃなくて、いいことも、にこにこしちゃうのも、しちゃうから、しちゃうだけ。でも、歩きスマホをしてぶつかってくる人をよけてあげ続けるのは、なぜいつもわたしだけ?「割りに合わなさ」を訴える女性を描いた表題作(「いい子のあくび」)。

郷里の友人が結婚することになったので式に出て欲しいという。祝福したい気持ちは本当だけど、わたしは結婚式が嫌いだ。バージンロードを父親の腕に手を添えて歩き、その先に待つ新郎に引き渡される新婦の姿を見て「物」みたいだと思ったから。「じんしんばいばい」と感じたから。友人には欠席の真意を伝えられずにいて……結婚の形式、幸せとは何かを問う(「末永い幸せ」)ほか、社会に適応しつつも、常に違和感を抱えて生きる人たちへ贈る全3話。

高瀬隼子は初めて読んだ。最近好んで読んでいる石田夏穂よりもねっとりしていて毒が強い。決して読後感は良くないが、共感できるところもあるし、何より読ませる。自分も、全くよけずにまっすぐ歩いてくる奴に「ぶつかったる」と思ったことは一度ではない。まあ、結局寸前でよけるけど。