きょうはそういう感じじゃない(宮沢章夫)★★★☆☆ 11/23読了

宮沢章夫は考える。人はなぜ「きょうは中華って感じじゃないんだよな」と思ってしまうのか。「って感じじゃない話法」には、何かの力があると考える。

また、宮沢章夫は思う。あたりまえのことを口にする人がいたらいいなと。そこから想像はひろがり、こんなことを言う場面を思い浮かべる。

「飴をなめながらパンを食べると食べづらいね」

思考することで生まれるゆるやかな笑い。笑うことではじまる新しい思考。分かりやすいけど深遠な文章。世界の見え方をちょっぴり変えてくれそうな視点。宮沢章夫がのこした、傑作エッセイ。シティポップ論や1万字に及ぶロングインタビューも併録。

劇作家、演出家、小説家とマルチに活躍した宮沢章夫が、生前に考えていたことはなんだったのか。軽妙洒脱にして鋭くもあるその才能にたっぷりと浸れる一冊をここに。

久しぶりに宮沢章夫の馬鹿馬鹿しいエッセイを読んだ。視点も独特だし、文体も独特なんだよな。そうかと思うと、エッセイの次には「自粛への直感的な違和感」なんて真面目な論考もあってギャップもすごい。最後に収録されているロングインタビューは2010年のもの。これからは遊園地再生事業団を一生懸命やります、残された第五の人生を一生懸命やりますよ、と締めている。没後1年が過ぎ、亡くなってしまったのが、今だに残念でならない。