砂に埋もれる犬(桐野夏生)★★★☆☆ 3/21読了

小学校にも通わせてもらえず、日々の食事もままならない生活を送る優真。
母親の亜紀は刹那的な欲望しか満たそうとせず、同棲相手の男に媚びるばかりだ。
そんな最悪な環境のなか、優真が虐待を受けているのではないかと手を差し伸べるコンビニ店主が現れる――。

ネグレクトによって家族からの愛を受けぬまま思春期を迎えた少年の魂は、どこへ向かうのか。
その乾いた心の在りようを物語に昇華させた傑作長編小説。

読んでも楽しい気持ちになれるはずがないと分かっているのに読んでしまうのは何なんだろう。それは作者が桐野夏生だからだろうな。予想通り、リアルに辛い話だった。でも、こういうことが実際に行われていて、こういう少年がいるのも事実なのだ。ラストにも救いがなく、ずっと辛い話なのだが、それでも読ませるのは作者の筆力なのだろう。次の新作ももう出ているし、70歳を超えてこの刊行ペースは凄いの一言。