NIPPON文学シリーズ KAAT式らくごの会 〜文学しばり〜 柳家喬太郎/桂吉坊

柳家さん坊: つる
柳家喬太郎: 梅津忠兵衛(小泉八雲作)
桂 吉坊 : 花野(川上弘美作)


(仲入り)


桂 吉坊 : 厄払い
柳家喬太郎: 雉政談(小泉八雲作)


トーク柳家喬太郎、桂 吉坊

「つる」はそれなりの落語家がやると結構面白いのだが、前座ではもちろん笑えない。それはいいのだが、噺の途中で扇子を変な位置に置いたまま続けるので、そっちが気になって仕方がなかった。
喬太郎の一席目は怪談じみた噺。途中はちょっと不気味なんだが、最後はめでたく終わった。吉坊の一席目は川上弘美の『神様』に収録されている「花野」という短編を落語化したもの。未読だったので話は知らなかった。事故で亡くなった叔父さんがたびたび主人公の男性のもとに現れて雑談を交わしていく。ただ、嘘をつくとあちらの世界に戻ってしまう。上方の落語家らしく、上手く鳴りものを使っていた。最後は切ない幕切れで、いい余韻が残った。
仲入り後の吉坊の二席目は「厄払い」。私は初めて聴いた。いかにも落語らしい滑稽な話で存分に笑わせてもらった。それにしても吉坊は可愛らしいねえ。プロフィールからすれば31歳のはずだが、どこからどう見ても中学生だよな。
喬太郎の二席目も小泉八雲から。ある夫婦のもとに死んだ父親が雉に生まれ変わってやってくるのだが、その雉の表情が笑えた。いい席だったので、細かい表情までバッチリ見えた。後半、物語は急展開して、また怪談じみ、ちょっと後味の悪い終わり方となる。


最後にトークがあって、噺をどうやって作って、どうやって覚えるのかという司会者からの質問があった。今回、吉坊はMacに台本を打ち込んで、今度はそれを手書きで書き写しながら覚えたそうだ。一方、喬太郎はそういうノートは作らずに、原作を読み込んで、あとは頭の中で拵えたそうだ。
喬太郎の二席目は実は2つの話を繋げたものだった。道理で展開に無理があるはずだ。しかも、繋げてみようと思ったのが当日だったというのが驚きだった。
一席目の噺をトリに持ってくればお客さんも気持ちよく帰れるんだろうけど、あえて後味の悪いのをうしろに持ってきて、そうはさせないんですよ、なんて話もしていた。
なかなか意欲的な取り組みの会で、他所では聴けない噺が生まれるところに立ち会えて、貴重な体験だった。