ONEOR8『ペノザネオッタ』@赤坂RED/THEATER

今回の作品は、ある窮地に立たされた友人を仲間たちが救おうとする物語です。
この物語は、矢部太郎さんから受けるイメージから発想しました。
矢部さんは、いつも何かに怯えているような、常にデューク東郷に狙われているような、
毎日の生活費がピンチのような、そんな目をしています。
そんな彼に救いの手を差し伸べる人たちがいてほしい、と台本を執筆中です。
私は常日頃から腕時計に目の行かない芝居をやりたいと考えています。
日本が大変な状況の中、少しでも時間を忘れるような作品を創る所存です。


作・演出/田村孝裕

【出演】
恩田隆一 和田ひろこ 野本光一郎 冨田直美 伊藤俊輔
赤澤ムック(黒色綺譚カナリア派) 白州本樹 山口森広 広澤草 根本雅也 関口敦史
矢部太郎カラテカ


公演期間 2011年6月18日(土)〜26日(日)
劇場 赤坂RED/THEATER

結論から言うと上演中腕時計に目が行くことはなかった。なぜなら赤坂に来る前に上野で腕時計をオーバーホールに出してしまっていたから。というのは冗談で、実際観ていて時間が気になるようなことはなかった。
「少年時代振り返りもの」+「お通夜もの」ということで、「コルトガバメンツ」+「ゼブラ」のような感じだった。どちらも好きな芝居だったので、今回の「ペノザネオッタ」は私的にはツボだった。
ドラクエ」が全編にわたるモチーフになっている。残念ながら私はドラクエをプレイしたことがない。でもだからといって何も分からないということももちろんない。ちなみにサブモチーフは「魁!!男塾」。これは一応ジャンプで読んでいた。
子供の頃から病気を抱えていた主人公の周生(矢部太郎)が亡くなってしまい、その家族や仲間たちが通夜に集まっているシーンに子供時代のシーンがフラッシュバックのように挿入される。
劇団員はみな手堅かったが、伊藤俊輔は相変わらず普通の芝居ができないね。客演陣はみな良かった。サスペンデッズで初めて観た白州本樹は胡散臭い父親役で見事にハマり役。ひとり芝居をやっているという根本雅也は3役をこなして芸達者振りを見せてくれた。広澤草も可愛かったな。
周生がやり込んでいるゲームは「ドラクエ」ではなくて、父親が作ったパクリゲームである「ドラクワ」。ラスボスであるゾウマンを倒せずに結局亡くなってしまい、昔の仲間たちや父親が供養のためにラスボスを倒してゲームをクリアしようとするのだが、なかなかできない。よくよく思い出してみると、ラスボスを倒して終りではなくて、とある呪文を唱えてラスボスを助けて終わるという設定だったのだ。そしてその呪文が「ペノザネオッタ」なのだ。
ラスボスというのは周生にとっての「死」だったのかなという気がする。ラスボスを倒すことは出来なかったけど、友達や家族に恵まれた周生は決して不幸なだけの死ではなかったのだと思いたい。そして、最後に父親と友達によって唱えられた「ペノザネオッタ」という呪文によって、いつの日にか「勇者」として生まれ変わるに違いない。「周生」という名前には、どうしたって「輪廻」を感じるからね。
告別式も終わって、誰もいなくなった部屋で周生の姉の美和(和田ひろこ)が「ドラクワ」をやろうとしてやり方が分からずに「やり方が全然わかんないだけど、周生」と周生を呼んだところで暗転して、明るくなった時に出演者がみんながドラクエの登場人物のコスプレで部屋中に立っているのだ。真ん中はもちろん勇者の周生。これ一瞬だったんだけど、結構みんなちゃんとコスプレしてたんだよな。一部の人にしか目が行かずに全員を確認できなかったのが残念だった。
ONEOR8の次回公演は2012年の秋。あまりテレビとかで有名な人を呼ばないで、地味でも上手い人を集めてやって欲しいね。