インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日(中村安希)★★★☆☆ 5/24読了

26歳の私は、ユーラシア・アフリカ大陸へ2年間の旅に出る。「その地域に生きる人たちの小さな声に耳を傾けること」を主題に、そして、その“小さな声” を手がかりに、生き延びる手段を模索し、世界を見つめ直していく。中国からチベットへ抜け、高僧に謁見。インドを放浪し、危険地帯といわれているパキスタンに入国。イスラム圏では、旅を続けるために戒律に従い、2度の結婚と2度の離婚を経験する。アラビア半島からアフリカ大陸へ渡り、オンボロ列車、船、バス、トラック……が壊れて、荒野へ放り出された私は、地元の乗客たちと同じ時を過ごすうちに、世界の奇妙な一面を捉え始める。ウガンダで孤児たちと生活を共にし、タンザニアで宝石堀りをし、ザンビアで密輸に加わり、ジンバブエで強盗事件に巻き込まれ …。私は、旅を続ける中で、人間社会の深い闇と確かな希望を発見していく。

どうしたって『深夜特急』と比べてしまうわけだが、『深夜特急』とは大分違う。『深夜特急』が「旅行記」なら、こちらは「エッセイ」だ。本書は「線」でつながれた話ではなくて、各土地で経験した話をスポット的に「点」として記している。
著者が何をしに行きたかったのかというのが疑問だったのだが、その辺の葛藤は本書内に出てきた。著者の行動や考え方がやや鼻につく嫌いはあったけど、文章は瑞々しかったし、十分に面白かった。