出星前夜(飯嶋和一)★★★☆☆ 10/19読了

すべての民にとって不満のない世などありえない。しかし、民を死に追いやる政事のどこに正義があるというのか。寛永十四年陰暦七月、二十年にも及ぶ藩政の理不尽に耐え続けた島原の民衆は、最後の矜持を守るため破滅への道をたどり始めた。

島原の乱」が単なる隠れキリシタンたちの蜂起ではないということが本書を読むとよく分かる。第一部では圧政に苦しむ民衆たちの様子が描かれ、第二部ではついに蜂起した民衆たちの籠城戦が、これでもかというくらいに微に入り細を穿って描かれる。
戦争は誰にとって益をもたらさない。それでも蜂起するしか道のなかった民衆たちの気持ちが痛いほど伝わってくる。いつか、舞台となった島原の地を訪れてみたいと思う。
本書の主人公はあくまで「島原の乱」であって、あまり人物がクローズアップされていない。寿安や監物をもっと書き込んでくれたらなと思わなくもない。
前作『黄金旅風』に連なる話なので、先に『黄金旅風』を読んでおくことをお薦めする。

出星前夜
出星前夜飯嶋 和一

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