家日和(奥田英朗)★★★★☆ 4/16読了

「家」を舞台にした短篇集。ネットオークションにハマっちゃう奥さんや、会社が倒産して妻が働きに出たので専業主夫になった旦那さん等々が登場する。中でも私が一番面白かったのは「家(うち)においでよ」という作品だ。


主人公が妻と別居することになり、妻が自分の家財道具一切を持って出て行ってしまったところから話は始まる。カーテンもソファも持って行かれてしまったので、とりあえずカーテンを買いに行く。ここから図らずも「男の隠れ家」づくりが始まるのだ。カーペットや本棚を買い、高価なオーディオセットも迷った末に買ってしまう。何せマンションを買おうと思っていた資金があるのだ。そんな中、ソファだけはなかなか気に入ったものが見つからないのだが、ついに中古の家具店での「出逢い」を経てソファも手に入れた。


男なら誰でも自分の好きなものに囲まれた自分だけの部屋を持ちたいと思うだろう(女性もそうか)。主人公が金に糸目をつけずに本棚やオーディオセットを買い揃えていく様は読んでいて非常に羨ましかった。私も自分の部屋もどきをプチ改装して自分仕様にしてあるのだが、この程度では物足りない。私の夢は一人掛けのソファを買うことなのだ(一人掛けのソファってなんだか贅沢だよね)。革製で固すぎず柔らかすぎずのものがいいね。サイドテーブルを置いて、エスプレッソを飲みながら本を読んだり、ワインを飲みながらDVDを観たりするのだ。まあ、それはさておき。


主人公の部屋はあまりに居心地がいいので会社の同僚たちの溜まり場と化し、その友人の一人がこう漏らす。

「おれ、思うんだけど、男が自分の部屋を持てる時期って、金のない独身生活時代までじゃないか。でもな、本当に欲しいのは三十を過ぎてからなんだよな。CDやDVDならいくらでも買える。オーディオセットも高いけどなんとかなる。けれどそのときは自分の部屋がない・・・」


この辺のリアルなセリフは奥田英朗の真骨頂だ。最後は別居中の奥さんと仲直りしそうな雰囲気で終わる。すべての短篇がほのぼのとしたラストではないが、ほのぼの系のラストが多い。読んでいて、ああ家っていいな、家族っていいなと思わせてくれる。奥田英朗らしい短篇集で、読後の満足感はかなり高いね。


家日和
家日和
posted with 簡単リンクくん at 2007. 4.16
奥田 英朗著
集英社 (2007.4)
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