個展に出品された肖像画に何者かがナイフを突き立て、硫酸をかけた。その事実を知った画家が取った行動とは? 広告界と美術界を舞台に、男たちと女たちの痛切な悲哀を描いた全3編を収録した、心揺さぶられる作品集。
長さから言えば表題作の「ダナエ」が中編で、「まぼろしの虹 」と「水母」が短編か。「ダナエ」は『乱歩賞作家 青の謎』に収録されているだけあってミステリータッチの作品だが、本質的にはミステリーではない。全3編とも男女の機微みたいなものを見事に掬い取っている。
藤原伊織だけあって巧いのだが、一方で「だから何なんだよ」とも言いたくなる。やはり長編の方が向いているのかもしれない。
それから、誰それは実は誰それの子どもでしたみたいな隠れ血縁をネタにした小説はもう勘弁して欲しい。藤原伊織に限らずね。
ダナエ | |
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