ラグビーの原点

日本選手権決勝 東芝府中vsNEC 秩父宮ラグビー場 テレビ観戦

雨の秩父宮東芝のキックオフで試合開始。予想通りの激しい戦いとなった。NECは安藤のハイパント一辺倒だが、雨なのでこれは効果的だ。東芝は何とかつないでいこうとするのだが、どうしても雨のためにミスが多い。NECがPGを2本、東芝が1本決めて、東芝の3-6で前半を折り返した。
後半は風上に立った東芝が主導権を握ったが、攻め込んではキックで戻されるという連続。12分、東芝はPGのチャンスを得るも日原が比較的イージーなキックを外してしまう。14分には、NECもちょっと遠目のPGのチャンスがあったが、安藤のキックは届かなかった。その後も一進一退があって、東芝は18分に再度PGのチャンス。今度は決めた。これで6-6の同点。30分にはマクラウドに代えてバツベイを投入。33分にNECはマーシュがシンビンで一時退場。これは東芝有利になったと思ったが・・・。34分の逆転のPGのチャンスを日原が外してしまった(嗚呼・・)。後半の35分くらいからはとことんモールにこだわって押し続けるが、NECのディフェンスも非常にしつこくてなかなか押し切れない。ロスタイムは3分。42分にはケプも投入。フォワードにバツベイ、ケプ、オトもつぎ込んで押し続ける。やっとインゴールになだれ込んだと思ったら、ダウンボールができない。5メートルスクラムの際に相田レフリーからはラストプレーの声がかかる。スクラムからモールにし、さらに左へ展開。これが戻されて右オープンへケプから日原へパス。日原一人かわして、飛び込んだかと思ったが、1メートル足りない。ここに殺到する両チーム。最後は吉田がボールを拾ってインゴールに飛び込んだのだが、無情にもノッコンしてしまった。ここでノーサイド。根を詰めて東芝を応援していた私もノーサイドの笛とともに一気に放心した。
最後、吉田がトライしていればサヨナラゲームだった。東芝ファンの私としては、普通は吉田がノッコンした時に激しく悔しがるはずなのだが、このときは不思議とそれほど悔しくなかった。それだけNECのディフェンスも素晴らしかったのだ。
後半35分過ぎからは完全に意地と意地のぶつかり合いだった。あんなのラグビーじゃないという人もいるだろう。確かにラストの攻防はラグビーというボールゲームを超越した「何か」になっていた。勝ちたいとか負けたくないとかじゃなくて、「この楕円球をあのラインの向こうの地面に付けたい」「いやそうはさせない」というただそれだけの思いを胸にした15人対15人の男たちの闘いだった。ラグビーがこの世に生まれてから今までの間にずいぶん戦術は進化しただろう。しかし、「この楕円球をあのラインの向こうの地面に付けたい」「いやそうはさせない」ということこそラグビーの原点だろう。東芝vsNECのラストの攻防にはその原点があった。だから観ているこちらの胸まで熱くなったのだろう。
ノーサイドのあと、選手たちは敵味方関係なく抱き合っていた。確かにあれだけ力のこもったプレーをすれば、勝ち負け関係なく、達成感というか充実感があるだろう。健闘を讃え合うという言葉がぴったりの素晴らしいシーンだった。
結局、6-6で両チーム優勝である。NECは日本選手権2連覇。東芝府中はこれで3冠達成である。東芝ファンの私としては「たら・れば」をちょっとは言いたくなるけど、あんなに力の入った攻防は滅多に観られるものじゃない。今日はいいものを観させてもらいました。

東芝府中vsNEC(6-6) 両チーム優勝!