心は孤独な狩人(カーソン・マッカラーズ)★★★★☆ 10/30読了

1930年代末、アメリカ南部の町のカフェに聾啞の男が現れた。大不況、経済格差、黒人差別……。店に集う人々の苦しみを男は静かに聞き入れ、多感な少女を優しく包み込む。だがその心は決して満たされない――。フィッツジェラルドサリンジャーと並ぶ愛読書として、村上春樹がとっておきにしていた古典的名作、新訳で復活!

カーソン・マッカラーズは『結婚式のメンバー』を先に読んでいた。その本にも出ていたが、本作にも著者の分身のような少女が出てくる。ただ、本作はそれ以外にも何人かの主要登場人物がいて、それぞれの悩みを抱えている。時代は1930年代末、ところはアメリカ南部。大不況や経済格差、黒人差別問題が物語に色濃く影を落とす。80年前に書かれた本だが、いまだに同じような問題は続いている。読んでいて辛い部分も多かったが、著者の眼差しは実に細やかだった。この本が23歳の若者が書いた処女作だというのがとにかく信じられない。