人気歌人で、作家としても活躍している東直子のデビュー歌集。代表歌「廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て」ほか、シンプルな言葉ながら一筋縄ではいかない独特の世界観が広がる347首。小林恭二、穂村弘、高野公彦らによる単行本刊行時の栞文に、新たに花山周子による解説、川上弘美との対談も収録。
東直子のことはもちろん知っていたが、歌集を読むのは初めて。私の知っていた「おねがいねって渡されているこの鍵をわたしは失くしてしまう気がする」がこの第一歌集の冒頭の一首だった。ファンタジーっぽくて、意味が取れない歌が多かったが、独特の世界観は悪くない。短歌というよりは物語っていう感じ。巻末には小林恭二、穂村弘、高野公彦らによる栞文や、花山周子による解説が載っていて、それを読むと少しは理解できるのでありがたい。