モリオ(荻上直子)★★★☆☆ 11/9読了

「モリオ」―青年モリオは、母の形見の足踏みミシンを前に思い出していた。子供のころミシンの下に隠れるのが好きだったこと、ミシンを踏む母が大好きだったこと、そして姉のために母が作った花柄のスカートを穿きたかったことを…。「エウとシャチョウ」―末期癌の猫シャチョウを飼う女医ヨーコと同棲することになった「僕」。日々、シャチョウの面倒を見ているうちに、才能など何も無いと思っていた自分に、「猫と心を通わせる力」があることに気がつく…。

栗田有起チックな「モリオ」と村上春樹チックな「エウとシャチョウ」の2作品が収録されている。
「モリオ」はとても良かった。今年読んだ短編のベスト5には入るな。ありそうでなかった設定が活きているし、主人公のモリオもいそうでいなさそうで、いなさそうでいそうという絶妙の案配である。階下の女の子との交流もありがちなようでありがちではない。
姉や姉の夫の人物造形もいいし、そこはかとないユーモアのまぶし方も巧い。スパッと切り落としたようなラストもいいね。
「エウとシャチョウ」の方も良かったんだけど、こちらはあまりにも村上春樹の小説に似すぎていて素直に楽しめなかった。
西川美和といい、荻上直子といい、小説の方の才能も素晴らしいね。

モリオ

モリオ