つい最近、朝日新聞に著者のインタビュー記事が載った。
社会派推理小説を書いてきた宮部みゆきさん(49)が、青春小説に挑んだ。『小暮写眞館』(講談社)は、現代を舞台にした小説では「初のノンミステリー」という。いわく「何も起きない小説」。これまで透徹した筆致で多くの殺人事件を描き、登場人物を不幸にしてきた。「2周目の出発点の作品」は、彼らを救う物語でもある。
『理由』の“一家4人殺害事件”。『模倣犯』の連続誘拐殺人事件――。「書いてつらくなるような事件は『もう書きたくない』という気持ちが、正直、出てきてしまいました」
主人公は高校生の花菱英一、通称「花ちゃん」。名字なのに親も「花ちゃん」と呼ぶような、一風変わった家庭に育った。父は、閉店した写真屋「小暮写眞館」を自宅に。いつの間にやら、心霊写真の謎を追う羽目になる。
かつての社会派推理小説のように、伏線が絶え間なく連鎖するスリリングな展開にはならない。花ちゃんと友だちの会話など、「本筋とは関係ない無駄話をたらたらと書いているんです」。感情が盛り上がるような場面も、あえて筆を抑制した。「ゆるさを大切にしたかった」からだ。
面白かったんだけど、さすがにちょっと長いし、くどいね。花菱一家のことをメインに据えるのか、不動産屋の女性社員で、周囲との対話がうまく行かずに苦しむ垣本順子のことをメインに据えるのか、どっちかに絞った方がよかったんじゃないかな。いろんな話がてんこ盛りになっちゃってるので、やたらに長くなっている。まあ、それがいいんじゃないかという意見もあるだろうけど。
高校生の青春小説ということでは、この本を読んでいて『夜のピクニック』(恩田陸)を思い出していた。『夜のピクニック』は最高に面白かったなとこの本を読んで再確認してしまった。