直接火にかけないことで逆に奥深くまで火を通しうる「湯煎」(バン・マリー)のようにゆっくりと、彼方に過ぎ去った思い出や、浮いては沈む想念をやわらかな筆捌きでつづる散文集。
思考を湯煎にかけるという考え方は、永遠のモラトリアム青年のような堀江敏幸に実に似つかわしい。よく言えば繊細な、悪く言えばうだうだしたエッセイ集である。面白い話とつまらない話に差がある。最初の方でつまらない話に当たった時は、ずっとこの調子なら読むのよそうかな(図書館で借りた本だし)と思ったが、読み進めて行くと面白い話もあるので、結局最後まで読んでしまい、堀江敏幸のペースに乗せられた感じだ。
バン・マリーへの手紙 | |
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