ティンブクトゥ(ポール・オースター)★★★★☆ 11/20読了

私はいまだかつて犬も猫も飼ったことがない。だからなのか、正直、犬も猫もあまり好きではない。「猫ミステリーアンソロジー」なんかも敬遠したいたぐいの本だ。そんな私がなぜ犬が主人公の本を手に取ったのか。まあ有り体に言えば、ポール・オースターの本だからだ。
物語は犬のミスター・ボーンズの目を通して語られる。主人のウィリーはテレビでサンタクロースから啓示を与えられて以来、博愛の教えを説いて回るようになった変わり種だ。人間の言葉を理解するミスター・ボーンズとウィリーの交流が、主に過去を振り返る形で描かれる。というのもウィリーはもう死が目前なのだ。
主人公は犬なわけだが、ミスター・ボーンズは人間のような思考能力を持っているので、読んでいると犬が主人公であることを忘れそうになる。ウィリー亡きあと、ウィリーの教えをもとに新しい主人を探すべくミスター・ボーンズは奔走する。そこで紆余曲折があるのだが、もはやこれは犬の話ではない。われわれ人間の話として置き換えてもなんら違和感はない。
犬を主人公にしても相変わらずオースターの筆は冴え渡っている(オースター+柴田の筆はというべきか)。ラストも予定調和的には終わらない。『偶然の音楽』を思い出させる、やや唐突なラストがかえって余韻を深くしている。犬好きの人には堪らない本だと思うよ。

ティンブクトゥ
ティンブクトゥポール・オースター 柴田 元幸

新潮社 2006-09-28
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おすすめ平均 star
starひょっとしてこんな事考えていたの。君たちは。。。
star久しぶりに後味の良い本にめぐり合えました
star表紙の犬が可愛いすぎなんですが

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