君が手にするはずだった黄金について(小川哲)★★★☆☆ 2/26読了

才能に焦がれる作家が、自身を主人公に描くのは「承認欲求のなれの果て」。
認められたくて、必死だったあいつを、お前は笑えるの? 青山の占い師、80億円を動かすトレーダー、ロレックス・デイトナを巻く漫画家……。著者自身を彷彿とさせる「僕」が、怪しげな人物たちと遭遇する連作短篇集。彼らはどこまで嘘をついているのか? いや、噓を物語にする「僕」は、彼らと一体何が違うというのか? いま注目を集める直木賞作家が、成功と承認を渇望する人々の虚実を描く話題作!

面白かった。著者を思わせる主人公とその周りの人たちとの話だが、どこまでが本当でどこまでがフィクションだか分かりにくい。川上弘美の『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』もそんな感じだった。流行ってるのかな。3月11日に何をしていたかはみんな覚えているけど、前日の3月10日に何をしていたかは覚えていないというのは成る程その通り。それで一編書いちゃうのは目の付けどころがいいね。