我が手の太陽(石田夏穂)★★★☆☆ 10/22読了

第169回芥川賞候補作。
鉄鋼を溶かす高温の火を扱う溶接作業はどの工事現場でも花形的存在。その中でも腕利きの伊東は自他ともに認める熟達した溶接工だ。そんな伊東が突然、スランプに陥った。日に日に失われる職能と自負。野球などプロスポーツ選手が陥るのと同じ、失った自信は訓練や練習では取り戻すことはできない。現場仕事をこなしたい、そんな思いに駆られ、伊東は……。

『我が友、スミス』を読んで以来、石田夏穂を追いかけている。私が読んだ中では初の男性主人公である。しかもユーモアもない。そういう意味では新境地なんだろうか。男性主人公でユーモアがなくても、やっぱり面白い。この溶接工の話を読んで、車谷長吉の小説を想起したのは私だけだろうか。